鋳物の基本知識 Basic knowledge of casting
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鋳物の世界
The world of castings
that supports our daily lives
鋳物（いもの）は、金属を溶かして型に流し込み、冷やして固めることで作られる製品のことです。私たちの生活の中であまり意識することはないかもしれませんが、鋳物は驚くほど多くの場面で活躍しています。
ここでは、身近に見つけられる鋳物の例をご紹介します。
街中の道路でよく見かけるマンホールの蓋は、鋳鉄で作られています。重くて丈夫なので、車が通ってもびくともしません。
キッチンで使う鉄製のフライパンや鍋の中には、鋳鉄で作られているものがあります。熱を均一に伝える性質があり、調理に最適です。
自動車のエンジンやブレーキディスクなどの重要な部品も鋳物で作られています。これらの部品は、耐熱性と強度が求められるため、鋳物が適しています。
公園のベンチの脚や街灯のポールなども鋳物で作られていることが多いです。鋳物は、屋外でも長期間使用できる耐久性があります。
銅像や鐘、花瓶などの美術品や工芸品にも鋳物が使われています。これらは、複雑なデザインや細部の表現が可能な鋳物技術によって作られています。
鋳物は、私たちの生活に欠かせない技術です。身の回りにある鋳物製品を探してみると、
鋳物の技術がどれほど広く、そして深く私たちの暮らしに浸透しているかが分かるでしょう。
鋳物の知識を持つことで、ものづくりの世界への興味がさらに広がるかもしれません。
鋳物の歴史
History of casting
鋳物を作る技術を鋳造と言います。ここでは、鋳鉄鋳物を中心とした鋳造技術発展の歴史を簡単にご紹介します。
紀元前4000年～1500年頃
鋳物の始まり
人類の鋳物作りは、紀元前4,000年頃のメソポタミアで始まったといわれています。
この頃は青銅を溶かして型に流し込み、いろいろな器物を作っていました。
鋳造は人間のものづくりの中で、最も古い技術の一つと言えます。
紀元前1,500年頃のエジプトのパピルスには、足踏みふいごで風を送りながら、るつぼで青銅を溶かし、大きな扉を鋳造している様子が描かれています。
弥生時代前期末
日本での始まり
日本の金属器の歴史は、弥生時代前期末に鉄器と青銅器がもたらされたことで始まりました。
鉄製品は鍛造が主流で、農工具や武具に使用され、青銅器は鋳造技術により銅鐸や銅剣などが作られました。
古墳時代には「たたら吹き製鉄」が広まり、飛鳥時代には日本最古の銅銭や和同開珎が鋳造されました。
奈良・平安時代には、宗教関連の銅鋳物や日用品、農工具が製造され、東大寺の大仏像が特筆されます。
この大仏は世界最大の青銅像で、高さ約15メートル、重量約250トンで、752年に完成しました。製造には石と土で原型を作り、その外側に粘土を使用する伝統的な鋳造法が用いられました。
その後、室町時代から桃山時代にかけて、茶の湯釜や鎌倉の大仏像が作られるようになりました。
江戸時代
製鉄技術の発達
江戸時代には、たたら吹き製鉄が完成し、特に出雲地方で盛んに行われました。
この技術で作られた玉鋼は、日本刀の素材として使われ、武器としての実用性だけでなく、美術品としても評価されました。
15世紀にはドイツで高炉製鉄法が発明され、産業革命の中で鉄の生産が大きく変革しました。
日本では幕末に黒船来航などの脅威を受けて大砲や軍艦の製造が求められ、大量の溶鉄を得るために反射炉が導入されました。
韮山の反射炉は、実際に大砲の製造に使用されたもので、唯一現存する反射炉として世界遺産に登録されています。
また、近代化に向けて幕府はオランダからキュポラの技術を導入し、これは現代の鋳物工場でも使用されています。
明治から大正にかけて、日本では造船や製鉄などの重工業が急速に発展し、基幹産業となりました。
第二次世界大戦以降
近代の鋳鉄鋳物
1947年にイギリスで発見された球状黒鉛鋳鉄により、強度の高い鋳鉄の製造が可能となりました。
戦後、日本は石炭や鉄鋼の増産を重要政策として推進し、1950～60年代に鋳物の生産量が急増しました。
技術的には、外国の技術を改良し、世界トップレベルの鋳造技術を確立しました。
1960年代にはモータリゼーションの進展により自動車産業が発展し、鋳物の約60％が自動車部品に使用されるようになり、自動車重量の約40％を鋳物が占めるようになりました。
しかし、バブル崩壊や自動車産業の海外進出に伴い、鋳物の生産量は減少し、大量生産から多品種少量生産へと変化しました。
21世紀
現在の鋳造業界
21世紀を迎え、日本の鋳造業界では新たな製造技術の可能性を追求し続けています。
軽量化、低炭素社会への対応など、新たな製造プロセスを生み出し、持続的な発展に挑戦しています。